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72 Seasons - METALLICA発売に思うあれこれ

注:この記事はレビューではありません。

VINYL

CDとメガジャケ

今回は前作の8年と言うインターバルに比べると幾分早い6年ちょっとのスパンでリリースされまして、自分的にはもうめっちゃ嬉しい限りです。

 

今回の作品は先行トラックが1曲づつ間隔を開けて公開され、4曲が事前に聴ける状態で発売を迎えましたが、リフの雰囲気に1st時代を感じさせる物が含まれていたりしましたが全体的にはデスマグネティック以降の、Greg Fidelmanをエンジニア〜サウンドプロデューサーとするコンビネーションでの順当な3作目、という感じでメタリカとして実に安定した完成度の高い作品に仕上がっています。

 

前作との違いというと、バランス的にアップテンポミドルを増やしてどっしりしたヘヴィ系を減らしたこと。また、そのアップテンポミドルをうまく配置して「演奏しか聴いていない層」にも退屈に感じさせないような曲順に仕上げたこと。ここに尽きると思います。

 

「演奏しか聴いていない層」とは分かりやすく表現すると

メタラーと表される人々の事です。その中でも歌が壊滅的にダメでもメタルとしての演奏のエキサイトメントがあればそれで良し、と評価してしまう人たち。

 

メタリカに関して、いわゆる「メタル」の最大公約数価値観でのみ評価した場合と、「James Hetfieldの歌」を中心としたロックバンド、として評価した場合でかなり大きな開きができます。

もちろん正当な評価は後者で行うべきであり、一介のヘヴィメタルバンドに収まるバンドではない、というのはご理解いただきたいところ。

 

メタリカはもちろん表現手段としてヘヴィメタルを完全に土台としていますが、彼らの本質はロックバンド、なのです。そうでなければBlack Album以降のBob Rock期のアルバムは作りえなかった。

もちろん、ハードロック・ヘヴィメタルスラッシュメタルなど全て大きく見ればロックのサブジャンルになるので、そういう意味ではより本流に近い要素を多分に持ち合わせているバンド、アーティストということになります。

 

また、メタリカは常に変化を求める歴史を歩んでいます。

例えて言うなら拡散型。同じ要素を繰り返し構築し直すAC/DCやSLAYERなどのバンドとは真逆の生き方。その有様はLED ZEPPELINとの共通点を感じるものであります。

 

ボブロック期のSt.Angerまでは常に「それまでとは違うもの」を作ろうと明確に目指していましたがあまりにも違った物に変化しすぎてそれまでのファンの中のコアな層から反発を受け、その事にバンドのメンタルも多分に影響を受けていました。

その辺はSome kind of monsterという映画で詳しく見て取れます。

 

その後、デスマグネティック制作にあたって、Def Jam総帥のリックルービンのディレクションを受け、メタリカは過去の自分達が持っていた良い要素を排除せず、そこからも新しいものを生み出して良いのではないか、というスタンスに変わりました。とはいえ、安易な初期のセルフパロディにならずに、初期とボブロック期に培ったものをうまくブレンドして作品を生み出すことに成功したのです。

 

なので、メタリカが今作り得る作品とは絶対に初期のセルフコピーなどではありえないし、ボブロック期の要素を捨て去ったわけでもなく、それらの経験全てを血肉にした「現在のメタリカの作品」以外にありえないのです。

そのようなことを今回のアルバムでも強く感じました。